二年越しに見つけた富士山

羽田空港から西日本方面へ向かう時は右側、東京へ戻る時は左側の座席を選ぶ。                                  窓の外に富士山が見えるかもしれないと思うとついその席を選んでしまうのだ。                           もっとも、見えるたびに熱心に眺めているわけではない。                                 この写真も二年前、白浜空港へ向かった機内で何気なく撮影した一枚である。                        その時は特別な感動を覚えた記憶もなく、そのまま忘れてしまっていたのだろう。                      ところが最近、スマートフォンが「思い出の一枚」として表示したその写真に思わず見入ってしまった。                                  あらためて眺めると、雲海の中に富士山の頂だけが浮かび上がっている。上空一万メートルから偶然巡り合った絶景だった。    調べてみるとこの雲は高積雲、いわゆる「ひつじ雲」らしい。                                   水滴でできた厚みのある雲のため塊の底や側面には微かに影が生まれるという。                       写真をよく見ると確かに雲の起伏が立体的に浮かび上がっている。                             雲頂の高度は約三千メートル、標高三七七六メートルの富士山はそれよりおよそ八百メートル高いため、山頂部分だけが雲海の上に姿を現しているのである。                                               二年ものあいだ手元にありながら、その一枚の価値に気づかなかった。そう思うと、運とは単に偶然与えられるものではなく、それを見出す心によって初めて姿を現すものなのかもしれない。                                せっかく巡ってきた幸運も、気づかなければただ過ぎ去ってしまう。運とは待つものではなく、自ら見つけるものなのだろう。                                 伊藤清                                        

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